ながれゆく葦

考えたこと、思ったこと、好きなことについてつらつら書いてゆく備忘録的ブログ。数学、プログラミング、ラノベ、アニメ、小説、音楽などについて。

スワロウテイル人工少女販売処(籘真 千歳) 感想(ネタバレあり)

 あらすじ

〈種のアポトーシス〉の蔓延により、関東湾の男女別自治区に隔離された感染者は、人を模して造られた人工妖精(フィギュア)と生活している。その一体である揚羽(あげは)は、死んだ人工妖精の心を読む力を使い、自警団(イエロー)の曽田陽介と共に連続殺人犯"傘持ち(アンブレラ)"を追っていた。被害者の全員が子宮を持つ男性という不可解な事件は、自治区の存亡を左右する謀略へと進展し、その渦中で揚羽は身に余る決断を迫られる――苛烈なるヒューマノイド共生SF

(Amazonより)

 

ネタバレあり感想

 第二部の中盤まではなかなか入り込めなかったが陽平と再会したあたりからは話に入り込めて面白かった。世界の作り込みが細かくなされているが、ラノベ的だが魅力で気でもあるキャラクターのおかげで肩を張らずに読むことができてよい。自治区内の事件から始まって日本本国、宇宙と話のスケールが広がっていくのは読んでいて心地よかった。置名草の話はからくりを聞いてとても感心した。記憶が一日しか持たないがために前日までに他の妖精が書き溜めてきた日記を読んで自分事と思ってその日一日を過ごし、記憶がなくなる前に日記をしたためてその日の自分を次の日の他の要請に託す…。ものすごく病的でもろく崩れそうな感じだけど(実際にそれを悪用されて事件が起こったわけだし)、クソみたいな仕様のもと生まれてきたけれども何とか自分を失わないように懸命に生きようとしている感じが、その日記が日傘の内側に描かれているということも相まって、とても美しく感じる。置名草はそれに加えて洋一から愛をもらっていて、その思い出が綴られた肌を最後まで残すというのは感動した。人間が人間に従順で人間に似た生物を生み出しても人間はそれを頼るだけ頼って最終的に滅びるだろう見たいなのを読んで面白いなあと思った。もう一回じっくり読んで深く考えてみたい。最後は未来に対して希望を持てるような終わり方でよかった。まだまだよくわかっていないところがあるので今後じっくり読んでいきたい作品。あと、読んでいて、作者はきっと人間好きなんだろうなあとふと思った。もしくはその真逆。

スワロウテイル人工少女販売処