賭博師は祈らない(周藤 蓮) 感想(ネタバレあり)
内容紹介
十八世紀末、ロンドン。賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。――それは、奴隷の少女だった。喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想いを通わせていくが……。やがて訪れるのは、二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。(Amazonより)
以下ネタバレあり感想
評判が良かったから買って少し読んでそのまま積んでいた本。初めて読んだときは中世のイギリスと縁がなかったため具体的に想像するのが難しかった。積み本消化でもう一度読んでみたら途中からぐっと引き込まれて一気に読んでしまった。中世イギリスが舞台で主人公が賭博師ということで異色な感じがしたけど内容は王道を行く不器用な青年と少女が少しずつ心を通わせていき、最終的に少女を取り戻すため敵と賭博で戦うというもの。最後の賭博は熱くて夢中で読んでいた。あちこちにちりばめられた伏線が見事に回収されていて読んでいて気持ちよくなった。文中には多くの中世イギリスの様子が出てきて知的好奇心がくすぐられた。
主人公のラザルスは色々な場面で「どうでもいい」といって切り捨てていたけどリーラがきてからはなんやかんやリーラに気をかけて教科書を買ってあげたり服を買ってあげたりと優しくて賭博師は似合わないんじゃあないかと思ってしまう。でも逆にそんな性格だからこそ養父の教えを守り賭博師として成功できたのかもなあと思う。
奴隷としてラザルスに買われたリーラは本当にかわいい。弱気のラザルスに対して勇気を出して寄り添ってあげて喋れない代わりに花の絵を描いてラザルスに見せてあげたり、いってらっしゃいませ、ご主人様とウッドボードに地道に練習する姿を想像すると健気でかわいらしい。リーラの故郷についての言及も少しあったから今後何かしら進展があるかも?
ラザルスとリーラには本当に幸せになってほしいなあと思う。読者である自分には祈ることぐらいしかできないけれども。
最後に印象に残った一文、というか場面。精神的に弱っていたラザリスに対してリーラが勇気を出して手を差し伸べる場面。ここら辺から一気に物語に入り込んだ気がする。ラザルスが不器用にリーラの頭を撫でた後に発したセリフ。
「…………寝るまででいいから、そこにいてくれ。」